呼吸器感染症について
かぜ症候群(上気道炎)
上気道(鼻腔から喉頭までの気道)の急性の炎症による症状「鼻症状(鼻水、鼻づまり)、咽頭症状(咽頭痛)」が主体で、発熱、頭痛、全身倦怠感などを呈する疾患です。
原因微生物は、80~90%がウイルス(ライノウイルス、コロナウイルスが多く、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルスなど)で、一般細菌、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミドフィラなどの細菌も原因となります。
治療は主に、安静、水分・栄養補給により自然に治癒するためにウイルスに効果のない抗菌薬は不要です。鼻汁を減らす薬、解熱剤などの使用など、いわゆる対症療法を行います。
インフルエンザ
インフルエンザウイルスによる急性熱性感染症で、本ウイルスにはA、B、Cの3型があります。突然の発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛などが現れ、せき、鼻汁、咽頭痛などの上気道症状がこれに続き、約1週間で軽快します。主な合併症として肺炎と脳症があげられます。
インフルエンザ迅速診断キットにより短時間で簡便に診断でき、A型とB型の鑑別も可能です。
治療は自宅での安静加療を原則とします。抗インフルエンザ薬は発症後48時間以内に使用しなければ、効果が期待できません。
急性気管支炎
急性上気道炎が気管から気管支まで波及し、せきやたんを伴うようになったものを急性気管支炎と診断します。
多くはウイルス感染、一部では二次性の細菌感染が起こる場合もあります。
主症状としてはせき、たん(膿性のこともあり)、発熱、食欲不振、全身倦怠感といった全身症状を伴うことがあります。
インフルエンザを除いて安静、水分栄養補給などの対症療法が中心になります。
市中肺炎
原因微生物は、肺炎球菌が最も多く、次いでインフルエンザ菌、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミドフィラと続きます。
せき、たん、息切れ、胸の痛み、発熱、疲れやすい、発汗、頭痛、吐き気、筋肉の痛み、腹痛、下痢といった症状が出現する事があります。
診察所見、胸部エックス線画像、血液検査で診断します。胸部CT検査も有用です。鼻やのどの奥をこすりとったり、たんや尿を出してもらい、原因微生物を調べます。
治療は抗菌薬の内服や点滴を行います。普段から栄養保持や運動、十分な睡眠等で免疫力を高め、禁煙、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを接種しておくことが、肺炎予防につながります。
介護施設関連肺炎
長期療養型病床でおきる肺炎、病院を退院後90日以内に起きる肺炎、介護を必要としている人に起きる肺炎、透析などの通院治療を受けている人に起きる肺炎で、多くが高齢者の肺炎です。
病原微生物に対する抗菌薬で治療します。
終末期医療として治療する場合には、患者本人にふさわしい治療を家族ともよく話し合いながら進めていく必要があります。
誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎は、嚥下機能(物を飲み込む働き)障害のため唾液や食べ物、胃液などと一緒に細菌を気道に誤って吸引することにより発症します。寝たきりの高齢者、脳梗塞後遺症やパーキンソン病などの神経疾患や寝たきりの患者に多く発生します。
治療は抗菌薬の内服や点滴を行います。また誤嚥防止のリハビリテーションも有効とされています。